*映画の感想はネタバレを含みます。

2023年映画個人的ベスト10

(順不同)

(私が今年映画館で観た映画の中から選ぶ。映画祭やリバイバル上映は一応除く)

 

ミューズは溺れない

裸足になって

あしたの少女

アダミアニ 祈りの谷

二十歳の息子

君は行く先を知らない

トリとロキタ

大いなる自由

サポート・ザ・ガールズ

ソウルに帰る

 

*『ミューズは溺れない』は『ガール・ピクチャー』を含むとし(おそらくAセクシャルorAロマンティックとおもしき少女とレズビアンの少女が出てくる青春映画)、『あしたの少女』は『アシスタント』を含むとし(女性視点で描かれる過酷な労働映画)、『君は行く先を知らない』は『熊は、いない』(パナヒ親子監督作品で難民移民がテーマにある)を含むとします。

*特別オタク感謝賞は、上半期『アイカツ!10th STORY 未来へのSTARWAY』、下半期白岩瑠姫くん主演『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』です。どちらも言いたいことはたった一つ……ありがとう。

 

2023年見た映画についての軽い所感。

クィアな人々が出てくる/題材とした映画はやっぱり少しずつでも増えてきてるなと思うし、今年は日本の映画でもそれを実感できたのがよかった。ただ日本の映画では小規模な作品が多くて、映画好きのクィアにすらリーチできてなかったりするのが歯がゆい。

2022年に『そばかす』を見て、今年は『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』『ミューズは溺れない』を見て、Aセクシャル/Aロマンティックじゃないかなあ?って人が主人公の日本映画をいきなり3本も見られたことに感慨深さを覚えた。決して多くはないのだけど、それまで一度も見たことがなかったから嬉しかった。

そして『ミューズは溺れない』は、フィンランドの映画『ガール・ピクチャー』と私の中で非常に響き合った。個人映画史として切り離せない2作になった。

あと、何も考えず好きな映画を選ぶとやはり女性の映画が多くなるなと思った。

ベストの10本だと、ミューズは溺れない、二十歳の息子、大いなる自由、ソウルに帰るにはクィアだったりクィアっぽいなって人々が登場する。また、 二十歳の息子、君は行く先を知らない、大いなる自由 以外は全て女性主人公の作品だった。君は~は主人公が誰か分からないけど。(一家全員か、車かな…)

 

あと、2019年ぐらいから毎年イスラーム映画祭に行っていて、できるだけ全作品を見ているのだけど、2023年は情勢のこともあり、『太陽の男たち』とそのトークセッションでの原作との改変ポイントのお話とともに思い出す毎日です。2020年のイスラーム映画祭で見た『ガザ・サーフ・クラブ』も今年上映されるらしくて、私も当時見て岡真理先生のトークセッションでの言葉含めて衝撃を覚えて(あの体験がなければパレスチナへの関心も知識も全くないまま、今のこの事態に頓珍漢なことを言っていたかもしれないなとか思う)たくさんの人に見てほしい作品だとは思ったけど、こうして最悪の事態になって注目を浴びるということに、複雑な気持ちもあったりします。

時勢がらみだと、同じくイスラーム映画祭で見た『マリアムと犬ども』、イ・チャンドン レトロスペクティブで見た『ポエトリー アグネスの詩』などもずっしりと腹に重く残っている。特に『ポエトリー アグネスの詩』は、性暴力を加害者の祖母という立場で描きながらも、被害者の視点を決して忘れていなかったところに心底感服した。老いた女性主人公の作品という点でも良かったし。対して『マリアムと犬ども』はチュニジアの実際にあった警察による性暴力事件が題材で、徹底的に被害者視点を貫いており、性暴力よりその後の二次加害(どちらも警察による暴力)に重点を置き、主人公の混乱や怯え、危機的状況をこれでもかと描きながら単なるかわいそうな被害者とはしない一方で、性暴力を告発する女性を単なる「権力と戦う勇敢な女性」にもせず、「戦わざるを得なかった女性」として描き出しているのが良かった。ラストシーンは胸を打つと同時に締め付けられる。ヒーローとはどこか「犠牲者」なのだと思わされた。

 

一応ドキュメンタリー部門だと、リバイバル上映含めてですけど、

アダミアニ 祈りの谷
二十歳の息子
理大囲城
マリウポリ 7日間の記録
燃えあがる女性記者たち
ガザ 素顔の日常
ぼくたちの哲学教室
ライフ・イズ・クライミング
愛しきソナ
NO 選挙,NO LIFE

って感じになります。ドキュメンタリーはやっぱりシリアスな題材になりがちだけど、『ライフ・イズ・クライミング!』は「視力を失ったクライマーとその相棒がアメリカでクライミングに挑む姿を描いたドキュメンタリー」なんだけどそこまでシリアスではなく、むしろ二人の信頼関係が良くて、クライミングのドキドキハラハラ感がある、良い感じのスポーツ映画でもありました。